うつろひたる菊。 蜻蛉日記『嘆きつつひとり寝る夜・うつろひたる菊』 現代語訳

蜻蛉日記「うつろひたる菊」現代語訳

うつろひたる菊

鷹を放つ [ ] 一 [ ]• 大意 夫・兼家(かねいえ)との不仲に悩み、作者は死にたいと思うものの、一人息子の道綱(みちつな)のことを考え死なないで、かわりに出家しようとする。 出家しようと考えている事を息子・道綱に相談すると、息子は、「母が出家するなら、もはや自分も法師になってしまおう。 」などと言う。 あまりに悲しいので、冗談で飼っていた鷹を今後どうするかと質問したところ、息子の出家の決心は思いのほか強く、なんと鷹を逃がしてしまった。 人となして、後ろ安からむ妻(め)などに預けてこそ死にも心安からむとは思ひしか、いかなる心地してさすらへむずらむ、と思ふに、なほいと死にがたし。 「 いかがはせむ。 かたちを変へて、世を思ひ離るやと試みむ(こころみむ)。 」と語らへば、まだ深くもあらぬなれど、いみじうさくりもよよと泣きて、「さなりたまはば、まろも法師になりてこそあらめ。 何せむにかは、世にも交じらはむ。 」とて、いみじくよよと泣けば、われもえせきあへねど、いみじさに、戯れに言いなさむとて、「さて鷹飼はではいかがしたまはむずる。 」と言ひたれば、 やをら立ち走りて、し据ゑたる鷹を握り放ちつ。 見る人も涙せきあへず、まして、日暮らし悲し。 心地におぼゆるやう、 争そへば思ひにわぶる天雲(あまぐも)にまづそる鷹ぞ悲しかりける とぞ。 日暮るるほどに、文(ふみ)見えたり。 天下(てんげ)のそらごと(虚言)ならむと思へば、「ただいま、心地悪しくて。 」とて、やりつ。 つくづく思い続けることは、やはり、なんとかして自分の意思で早く死んでしまいたいものだなあと願う以外ほかの事もないが、ただこの一人いる人(息子の道綱 のことを考えると、たいそう悲しい。 あとあと安心できそうな妻などに(息子を)預けてこそ、(私が)死ぬのも安心できそうだと思うが、(私が死んだら息子は)どのような気持ちでさまようだろうと思うと、やはりとても死ににくい。 「どうしようか。 かたちを変えて(=尼となって、官位も捨てて)、夫婦仲を思い切れるかと試してみようか。 」と(道綱に)話すと、まだ深くもない(年頃である)けれど、ひどくしゃくりあげて、よよと泣いて、(道綱は)「そのように(尼に)おなりになるならば、私も法師になってしまおう。 何をするためにか、世間にも交わろうか(=宮仕えする必要があろうか)。 (いや、母と離れてしまっては、もはや宮仕えする必要なんて無い。 )」と言って、はげしくよよと泣けば、私も(泪を)こらえきれないけれど、あまりもの深刻さに、冗談に言い紛らわそうと思って、「それでは、鷹を飼わないでは、どのようにしなさるつもり。 」と言ったところ、(息子は) そっと立ち上がり走って、(止まり木に)止まらせていた鷹をつかんで放ってしまった。 見ている人(=女房など)も、こらえきれず、(母である私は、もっと悲しいので、私は)まして一日中悲しい。 心の中で思われること(を歌にすると)、 と、なろうか。 (その後、)日が暮れる頃に、(夫・兼家からの)手紙が来た。 世界一の嘘(うそ)だろうと思うので、「ただいま具合が悪いので。 」と言って、(使いの者を)帰した。 語句(重要) ・いかが - 「いかにか」のつづまった形。 「いかに」の次の 「か」が 係助詞なので、結びは連体形になる。 ・しがな - 願望の終助詞。 「にしがな」「てしがな」などの形で使う。 ・まろ - 自称の代名詞。 男女ともに使う。 ・やをら - そっと。 静かに。 語注 ・争そへば - この文では、夫婦仲が悪いこと。 ・天雲(あまぐも) - 尼(あま)との掛詞。 ・そる - 鷹が飛び去る意味の「逸る」と、剃髪の意味の「剃る」との、掛詞。 ・ -。 うつろひたる菊 [ ] 一 [ ]• あさましさに見てけりとのみ知られんと思ひて、書きつく。 うたがはしほかに渡せるふみ見ればここやとだえにならんとすらん など思ふほどに、むべなう、十月(かみなづき)つごもり方(がた)に、三夜(みよ)しきりて見えぬときあり、つれなうて、「しばし試みる(こころみる)ほどに。 」など気色(けしき)あり。 さて、九月ごろになって、兼家が出てしまった時に、文箱があるのを何気なく開けて見ると、他の人(=女)に届けようとした手紙がある。 あきれて、見てしまったということだけでも(兼家に)知られようと思って、書きつける。 疑わしい。 他に送ろうとする手紙を見れば、こちらには、途絶えようちしているうのでしょうか。 などと思ううちに、(しばらくして、)案の定、十月の末ごろに、三晩続けて姿を見せない時があった。 (その後、兼家は)平然として、「(あなたの気持ちを)しばらく試しているうちに。 」などと事情を話す。 語句(重要) ・手まさぐりに - 手先で、もてあそぶこと。 転じて意味が、何気なし、何気なく、などの意味になった。 ・むべなう - 「むべなし」の事で、意味は、案の定(あんのじょう)。 ・ -。 ・ -。 語注 ・ -。 ・三夜(みよ) - 当時の婚礼では、三日、通いつづける。 三日続けて、兼家が自宅に来ないという事は、他の女と婚礼をしたと作者は考えている。 ・ -。 ・ -。 二 [ ]• 」とて出づるに、心得で、人をつけて見すれば、「町小路(まちのこうじ)なるそこそこになむ、とまり給ひぬる。 」とて来たり。 さればよと、いみじう心憂しと思へども、言はむやうも知らであるほどに、二、三日(ふつかみか)ばかりありて、暁方(あかつきがた)に、門をたたくときあり。 さなめりと思ふに、うくてあけさせねば、例の家とおぼしきところに ものしたり。 つとめて、なほもあらじと思ひて、 嘆きつつひとり寝る夜のあくるまはいかに久しきものとかは知る と、例よりはひきつくろひて書きて、うつろひたる菊にさしたり。 返り言、「あくる(明くる)までもこころみむ(試みむ)としつれど、 とみなる召し使ひの、来あひたりつればなん。 いと ことわり( 理)なりつるは。 げにやげに冬の夜ならぬまきの戸もおそくあくるはわびしかりけり」 さても、いとあやしかりつるほどに、ことなしびたる。 しばしは、忍びたるさまに、「内裏に。 」など言ひつつぞあるべきを、 いとどしう心づきなく思ふことぞ、限りなきや。 ここ(=私の家) から、夕方、「宮中に行かざるをえない用事がある。 」と言って出かけるので、(私は)納得がいかず、(召使いの)人に後をつけさせて見させたところ、「町の小路にあるどこそこに、(兼家の車が)お止まりになりました。 」と言って、(もどって)来た。 やっぱりだと、たいそうつらいと思うけど、どう言おうかも分からないでいるうちに、二、三日ほどたって、夜明けごろに門をたたく時があった。 そのようだと(= 兼家が来た)思うと、つらくて、開けないでいると、例の(小路の女の)家と思われる所に 行ってしまった。 翌朝、やはりこのままではいられないと思って、 嘆きながら、一人で寝る夜の、夜明けまでの間は、どんなに長いか、おわかりですか。 と、いつもよりは体裁(ていさい)を整えて書いて、色あせた菊にさした。 (兼家の)返事は 「夜が明けるまで待とうとしたけれど、 急な召使いが来てしまったので。 (おなたが怒るのも)とても 当然であります。 」 本当に本当に、(冬の夜はなかなか明かないが、)冬の夜ではないが、まきの戸が遅く開くのは、つらいことだよ。 」 とても不思議であるくらい、そしらぬふりをしている。 しばらくは、(本来なら)人目を避ける様子で、「宮中に。 」などと言っているのが当然であるのに、不愉快に思うこと、限りない。 語句(重要) ・これより - ここから。 この文での「これ」とは作者の家。 ・ さればよ - やっぱり。 「されば」は「さあれば」の変化した形。 ・ものしたり - 動詞「ものす」は婉曲的な表現。 何をするのかは、文脈による。 この作品では「行く」の意味。 ・とみなる - 急な。 ・ことわりなり - もっともである。 言うまでも無い。 ・げにやげに - 「げに」の意味は、「実に」「本当に」。 「げにやげに」と二回続けることで協調した言い方。 ・おそくあくる - 「あくる」は「明くる」と「開くる」を掛けた掛詞と思われる。 ・いとどし - ますます激しい。 ますますはなはだしい(甚だしい)。 語注 ・嘆きつつ・・・ - この歌は小倉百人一首に所収された。 ・うつろひたる菊 - 兼家の心移りを暗示させた。 ・まき - 檜(ひのき)など。 ・ -。

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蜻蛉日記「うつろひたる菊・町の小路の女」原文と現代語訳・解説・問題|なげきつつひとり寝る夜

うつろひたる菊

つとめて 【注1】、 なほ 【注2】も あらじ 【注3】と思ひて、 嘆きつつひとり寝る夜 の 【注4】 あくる 【注5】間は いかに 【注6】久しきものとかは 知る 【注7】 と、 例 【注8】よりは ひきつくろひ 【注9】て書きて、 うつろひたる 【注10】菊に さしたり 【注11】。 返り事、「明くるまでも 試みむ 【注12】と しつれ 【注13】ど、 とみなる 【注14】召し使ひ の 【注15】 来合ひたりつれ 【注16】ば なむ 【注17】。 いと ことわりなりつるは 【注18】。 げにや 【注19】げに冬の夜 ならぬ 【注20】まきの戸も遅くあくるは わびしかりけり 【注21】」 さても、いと あやしかりつる 【注22】ほどに、 ことなしびたる 【注23】。 しばしは、 忍びたる 【注24】さまに、「内裏に。 」など言ひつつぞ あるべき 【注25】を、 いとどしう 【注26】 心づきなく 【注27】思ふことぞ、 限りなきや 【注28】。 重要な品詞と語句の解説 語句【注】 品詞と意味 1 つとめて 名詞。 意味は「翌朝」。 2 なほ 副詞。 意味は「そのまま何もしないで」。 3 あらじ ラ変動詞「あり」の未然形+打消意志の助動詞「じ」の終止形。 意味は「いられまい」。 4 の 格助詞の主格。 意味は「~が」。 「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 5 あくる カ行下二段動詞「あく」の連体形。 「明くる」と「開くる」の掛詞になっている。 6 いかに 副詞。 意味は「どんなに」。 7 知る ラ行四段動詞「知る」の連体形。 係助詞「かは」に呼応している。 8 例 名詞。 意味は「いつも」。 9 ひきつくろひ ハ行四段動詞「ひきつくろふ」の連用形。 意味は「注意を払う」。 10 うつろひたる ハ行四段動詞「うつろふ」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。 意味は「色あせている」。 11 さしたり サ行四段動詞「さす」の連用形+完了の助動詞「たり」の終止形。 意味は「挿した」。 12 試みむ マ行上一段動詞「試みる」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。 意味は「試みよう」。 「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 13 しつれ サ変動詞「す」の連用形+完了の助動詞「つ」の已然形。 意味は「した」。 14 とみなる ナリ活用の形容動詞「とみなり」の連体形。 意味は「急だ」。 15 の 格助詞の主格。 「~が」。 16 来合ひたりつれ ハ行四段動詞「来合ふ」の連用形+完了の助動詞「たり」の連用形+完了の助動詞「つ」の已然形。 意味は「来合わせてしまった」。 17 なむ 係助詞「なむ」。 「なむ」の後に「帰りし・去りし」などが省略されている。 係り結びの省略については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 18 ことわりなりつるは ナリ活用の形容動詞「ことわりなり」の連用形+完了の助動詞「たり」の連体形+終助詞「は」。 意味は「当然のことであったなあ」。 19 げにや 副詞「げに」+間投助詞「や」。 意味は「本当に」。 20 ならぬ 断定の助動詞「なり」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。 意味は「ではない」。 21 わびしかりけり シク活用の形容詞「わびし」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の終止形。 意味は「つらいものだなあ」。 22 あやしかりつる シク活用の形容詞「あやし」の連用形+完了の助動詞「つ」の連体形。 意味は「不審に思っていた」。 23 ことなしびたる バ行四段動詞「ことなしぶ」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。 意味は「素知らぬ顔をしている」。 24 忍びたる バ行上二段動詞「忍ぶ」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。 意味は「隠している」。 25 あるべき ラ変動詞「あり」の連体形+当然の助動詞「べし」の連体形。 意味は「あるべき」。 26 いとどしう シク活用の形容詞「いとどし」の連用形。 意味は「ますます」。 「いとどし う」は「いとどし く」がウ音便化している。 27 心づきなく ク活用の形容詞「心づきなし」の連用形。 意味は「不愉快だ」。 28 限りなきや ク活用の形容詞「限りなし」の連体形+間投助詞「や」。 意味は「この上ないことよ」。 翌朝、そのままなにもしないでいられまいと思って、(和歌を詠んだ。 ) 嘆きながら、一人で寝る夜が明けるまでの間が、どんなに長いものかを、あなたは分かっていますでしょうか。 戸を開ける間も待てないあなたですから、分からないでしょうね。 と、いつもよりは注意を払って書いて、色のあせている菊に挿した。 (そしてそれを夫に送った。 )夫の返事として、「夜が明けるまでも待つことを試みようとしたけれども、急用の役人が来合わせてしまったので、(行かざるを得なかったのですよ。 )(あなたが言うことは)しごく当然のことでありましたよ。 本当に本当に(あなたが言うとおり冬の夜はなかなか明けずつらいものだけれど)、冬の夜ではない槇の戸を、なかなか開けてもらえないのもつらいことでしたよ。 」 それにしても、とても不審に思っている中で、(夫は)素知らぬ顔をしている。 しばらくは、隠している感じで、「宮中に 行く)。 」などと言い続けるべきなのに、ますます不愉快に思うことは、この上ないことよ。 いかがでしたでしょうか。 この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。 ・和歌の掛詞が分かるようにしておきましょう(注5)。 ・係り結びの省略は、省略された語が補えるようにしておきましょう(注17)。 ・注18「ことわりなり」・注19「げに」・注21「わびし」・注22「あやし」・注23「ことなしぶ」・注27「心づきない」は重要単語ですので、訳せるようにしておきましょう。 倉橋先生! 講義ありがたいんですが、 この話、仲直りできてない じゃないですか!! だから言ったでしょ。 この場面に相応しく ないって!! 知りませんよ。 やばい!! 妻が変身した!! !!! 何これ? 奥さん、変わりすぎでしょ!! うちに妻、 めちゃくちゃ強いので、 たぶんやられちゃうと 思うんですけど、 一緒に戦いましょう。 一緒にって、私、 関係ないですけど。 何で戦うのですか? ボス戦と同じなんで、 強制的に戦闘に なりまーす。 !!! この画面、前にも 出てきたな!.

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蜻蛉日記 「うつろひたる菊」解説

うつろひたる菊

さて、九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを手まさぐりに開けて見れば、人のもとにやらむとしける文あり。 あさましさに、見てけりとだに知られむと思ひて、書きつく。 疑はしほかに渡せるふみ見ればここやとだえにならむとすらむなど思ふほどに、むべなう、十月つごもり方に、三夜しきりて見えぬ時あり。 つれなうて、「しばし試みるほどに。 」など、気色あり。 これより、夕さりつ方、「内裏に逃るまじかりけり。 」とて出づるに、心得で、 人をつけて見すれば、「町の小路なるそこそこになむ、止まりたまひぬる。 」とて来たり。 さればよと、いみじう心憂しと、思へども、いはむやうも知らであるほどに、二、三日ばかりありて、暁方に門をたたく時あり。 さなめりと思ふに、憂くて、開けさせねば、例の家とおぼしきところにものしたり。 つとめて、なほあらじと思ひて、嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る スポンサーリンク 『蜻蛉日記』うつろひたる菊 のあらすじ.

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